16 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:43 ID:ICsMPgmt


   ── 一つは、ただの立ち話。


 

17 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:44 ID:ICsMPgmt
                       「え?そうなのか?」
「ええ、聖書にはそんなこと一行も
 書いてありません」
                       「しかし、みんなそんなことを書いたり
                        テーマにしてるじゃないか。」
「そう言うことを素直に信じるのは
 愚なる事ですよ・・・」
                       「っぐ。しかし・・・・」
                 ∧mi∧    ∧_∧                | ..:;|
                (s ´ー`)  (´→` )                | ..:;|
                ( ⊃  )   |  ⊂)                ,、--| ..:;|-
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\ `ー'
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^j | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         \|
                                           `'ー─


18 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:44 ID:ICsMPgmt
   「とにかく、です。カインはアベルを
    殺しても決して罪悪感にとらわれる
    事もなかったし、神もそれを許した・・・
    聖書にはそうとしか書いてありません
    映画『エデンの東』のように生涯つきまとう
    負い目なんてなかったんです」

                           「でも、印?そーゆーのを
                            刻印されたんじゃなかったのか?」

   「ええ、そう書かれています」

                           「そいつで後ろ指差されたとか、そーゆーのは
                             なかったのか?」

                 ∧mi∧    ∧_∧                | ..:;|
                (s ´ー`)  (´→` )                | ..:;|
                ( ⊃  )   |  ⊂)                ,、--| ..:;|-
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\ `ー'
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^j | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         \|
                                           `'ー─


19 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:45 ID:ICsMPgmt
「そこが、みんな勘違いしているところなんですよね
 神がカインにつけた印というのは『その犯した罪に
 たいして、何人たりとも彼を傷つけぬように。
 カインに害なす者があれば、誰であれ七倍の報復
 を受けるであろう。』という、要するに何をしても
 よろしいという天下御免の委任状をもらったてわけです」

                             「なんか時代劇であったな、そんなの」

「それから、カインはどうなったのかも聖書には
 書かれています。カインは町を作り、幸せな家庭を
 築き、商業,興業,農業,芸術全ての分野で
 膨大な成功を収めて、要するに、今『文明』と
 呼ばれるもの始祖となったんです」

                            「それ、本当なのか?」
「そうとしか書いてありませんがなにか?」     
                     
                 ∧mi∧    ∧_∧                | ..:;|
                (s ´ー`)  (´→` )                | ..:;|
                ( ⊃  )   |  ⊂)                ,、--| ..:;|-
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\ `ー'
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^j | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         \|
                                           `'ー─


20 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:45 ID:ICsMPgmt
                      「後悔した、とか全然ないのか?
                       さすらう放浪者になったって言われているけど」

  「全て、後世の解釈ですね。なんせ、聖書の
   文面は神聖な犯さざる物だというテクスト
   至上主義だった中世以前の教会でさえ、
   そこは、『神はカインに罪を思い知らせる
   べく、傷を与えぬように計らったのだ』と
   か、本来厳禁なはずの『解釈』してますしね」

                       「・・・なんだかすっきりしないが、現実味があるな・・・」
                 ∧mi∧    ∧_∧                | ..:;|
                (s ´ー`)  (´→` )                | ..:;|
                ( ⊃  )   |  ⊂)                ,、--| ..:;|-
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\ `ー'
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^j | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         \|
                                           `'ー─


21 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:46 ID:ICsMPgmt
                      「他に、なんかないのか?そういったような話」
「今日はえらく食いついてきますね」
                       「気にするな・・・」
「うーんそうですね、じゃあ箱の話なんて
 どうですか?」
                       「箱?神話とかの話?」
「ええ。あらゆる罪悪や憎悪をとじこめて
 おいたという、そういう箱の話」
                       「ああ、聞いたことがある。
                        少女に与えられたんだけど好奇心から開けて
                        しまって台無しにしたという話だろ。」
「それです。それで、あわてて閉じたら、
 最後に残っていたのが──」
                       「『希望』だったってんだろ。」
「変だと思いませんか?どうして罪悪や
 憎悪と一緒に希望なんかが入っていたのか?」

                       「ふむ、確かに」

                 ∧mi∧    ∧_∧                | ..:;|
                (s ´ー`)  (´→` )                | ..:;|
                ( ⊃  )   |  ⊂)                ,、--| ..:;|-
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\ `ー'
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^j | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         \|
                                           `'ー─


22 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:47 ID:ICsMPgmt
「これもなんて言いますか・・・わかりやすい
 解釈の方が広まって、本質が誤解されて
 いるパターンなんですね。」
                       「じゃあ、最後に残っていた
                        物はなんだったんだ?」
                 ∧mi∧    ∧_∧                | ..:;|
                (s ´ー`)  (´→` )                | ..:;|
                ( ⊃  )   |  ⊂)                ,、--| ..:;|-
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\ `ー'
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^j | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         \|
                                           `'ー─


23 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:47 ID:ICsMPgmt



   「・・・それは──『未来』です」
  
                       「・・・・は?」



24 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:48 ID:ICsMPgmt
「わかりやすく言うと予感とか前兆と言った方が
 いいかもしれません。
 要するに、これからなにが起こるのか、全部
 わかってしまうという、そういう不幸」
                       「不幸なのか?それって・・・」

「そうでしょう。──全部わかってしまうんですよ。
 辛いこととか、悲しい別れとか、なにもかもすべて
 見えてしまったら、たぶん人は生きていられなく
 なると思います」
                       「・・・・・・・・・・」

「でも、未来だけは閉じ込められていて、かろうじて
 人は『将来はきっといいことがある』という希望だけ
 は失わずにいられる、っていう──まあそんな話ですね。」

                       「なるほどな。」


                 ∧mi∧    ∧_∧                | ..:;|
                (s ´ー`)  (´→` )                | ..:;|
                ( ⊃  )   |  ⊂)                ,、--| ..:;|-
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二、\ `ー'
i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^ii^i.i^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^i.i^ii^i.i^ii^j | | ̄ ̄
`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´`´.| |
三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |
                                         \|
                                           `'ー─


25 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:49 ID:ICsMPgmt



    「──その箱を与えられた少女の名は・・・パンドラ」




26 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:49 ID:ICsMPgmt



     ・・・・・・・・・一つは、ある少女の話



27 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:52 ID:ICsMPgmt



     ノリル
    リ*゚-゚)・・・  
     (|  |)
   〜|  |
     し`J



28 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:52 ID:ICsMPgmt

        おーい、そこの君!もしかして迷子かい?
              ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄
                  ∧_∧  
                 (´人` ) 
                 (    ) 
                  | | | 
                 (_(__) 

     ノリル
    リ*゚-゚)・・・  
     (|  |)      
   〜|  |
     し`J



29 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:58 ID:ICsMPgmt

           いったいどうしたんだい?さっきからずっと突っ立ったままじゃないか。
                ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄

     ノリル             ∧_∧  
    リ*゚-゚)・・・          (´人` )
     (|  |)            (    )
   〜|  |             | | |
     し`J             (_(__) 



30 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:58 ID:ICsMPgmt

あなた、もうすぐ死ぬわ。
                       え?
     ノリル             ∧_∧  
    リ*゚o゚)            (´人` )
     (|  |)            (    )
   〜|  |             | | |
     し`J             (_(__) 



31 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:59 ID:ICsMPgmt

                    じゃあね。
  ∧_∧                ノリル 
  (; ´人`)               リ*゚-゚)
  (  つつ               |⊃|
  )  ) )               〜|  0
 (__)__)                し'´
え?ちょ、ちょっと!

32 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 17:59 ID:ICsMPgmt



いったいなんだったんだ。              ブロロロロロロ・・・・・・・
  ∧_∧
 (; ´人`)
 (    )
 | | |
 (__)_)
ん?なんだ?トラックがこっちに・・・

33 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 18:00 ID:ICsMPgmt


              _____l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
           ≡= - ─┐!           ≡= -
            //______,| |         ≡= -     |   ;;;
       从   ll.      =≡= -              | (,;;  ,;;;;)
≡= - バン  |l______| l_________| ;''' ;;;)
        「   ,;;-≡= -        ,;;--、  L ,;;;)
      W └─-!'    ,!───≡= --'   ≡= -
            `、__≡= -         `、__ノ


34 :見政念 ◆VMSHVHTgws :03/10/04 18:00 ID:ICsMPgmt
        
キャー                
                 ノリル 
ナンダ             リ*゚-゚)
                |⊃|
ヒトガヒカレタゾー       〜|  0
                し'´
        しかたないわ。あの人はそういう『未来』だったもの・・・

        はやく移動しなきゃ、追手はまだ来ていないみたいだけど。


                     〜私に続ける気があるなら続く〜